脂肪酸・組成表と代表的な原料油脂(オイル)の特徴

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石鹸のつくりには油脂がとても大切だということは、石鹸のしくみと製造方法についてでお話しました。石鹸の性質の決まり方の基本についてを書いた記事なので、ぜひそちらもご覧ください。

上記の記事で脂肪酸を取り上げましたが解説しきれないため、こちらで詳しく書いていきます。

 

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脂肪酸の種類と特徴

脂肪酸はとてもたくさんの種類があるので、石鹸の特性に関わるものを紹介します。

種類脂肪酸炭素数融点備考




カプリル酸C816.0℃洗浄力はない。遊離状態で刺激性あり
カプリン酸C1031.6℃洗浄力はない。*1遊離状態で刺激性あり
ラウリン酸C1244.2℃泡立ちをよくする。*1遊離状態で刺激性あり
ミリスチン酸C1454.4℃泡立ちをよくする。固く溶け崩れにくい
パルミチン酸C1662.9℃更に固く溶け崩れにくい。*1遊離状態で*2皮脂腺増殖を妨げる
ステアリン酸C1869.6℃特に固く溶け崩れにくい。酸化しづらい





パルミトレイン酸C16:1-0.5~0.5℃人の皮脂に10%以上含まれる。加齢とともに減少
オレイン酸C18:113.4℃肌に穏やか。泡立ち少なめ。比較的酸化しづらい
リノール酸C18:2-5.1℃さっぱり。酸化しやすい。*2皮脂腺の増殖を助ける
リノレン酸C18:3-11.2℃さっぱり。更に酸化しやすい。
その他リシノール酸22.5~24.5℃ヒマシ油。高粘度・高保湿で溶けやすい

*1遊離状態:脂肪酸が何ともくっついていない状態。脂肪酸は油脂の中では基本的に「脂肪酸トリグリセリド」、石鹸では「脂肪酸ナトリウム」として存在しています。石鹸化反応の過程や石鹸が水に溶けると脂肪酸が独立して遊離状態となります。人の皮脂にも普通に存在していますが、炭素数の少ない(C12以下)脂肪酸は肌に刺激を与える場合があるとされています。

*2皮脂腺:皮脂を分泌する組織。皮脂腺の増殖が妨げられると正常な肌の皮脂分泌が妨げられる可能性があると言われています。管理人は皮脂腺が減ると皮脂分泌が抑えられるが肌のバリア機能が低下するのでは、と考えています。ニキビには正常な皮膚に比べてリノール酸(皮脂腺増殖を助ける)が少なく、パルミチン酸(妨げる)が多くなっている研究結果があります。※遊離脂肪酸の皮脂腺に及ぼす影響について

背景が黄色いものは飽和脂肪酸で、青色は不飽和脂肪酸です。炭素数のセミコロン(:)の後ろの数字は二重結合の数。リシノール酸はヒマシ油にのみ含まれる例外。

飽和脂肪酸

飽和脂肪酸は単結合だけの脂肪酸です。

脂肪酸は炭素(C)・水素(H)が手をつないで、端っこにカルボキシル基(-COOH)というもの。前提として炭素にはほかの分子と結べる4つの手があります。

炭素に4つの手

飽和脂肪酸

この図はイメージをつかんでもらうために書いたので、かなりアバウトです…すみません。左側にはもっとCが続き、その量によって脂肪酸の種類が変わってきます。

隣の炭素どうしで片手ずつ、残った2つの手で2水素と結んでいるものを飽和脂肪酸といいます。

飽和脂肪酸はこれ以上空いている手がないので結びつきが強く安定しています。酸化しづらく、炭素数が増えるほど溶けにくく固くなります。

同様に炭素数が少ないと水に溶けやすく、多いと脂に溶けやすくなっていきます。炭素が続く部分が親油基という水に溶けづらい性質になっているからです。

また、炭素数が多くなるほど多くのミネラルと結びつきやすいため石鹸カス量も少し増える傾向にあるようです。

炭素数少ない炭素数多い
水への溶けやすさ×
洗浄力
酸化安定性
泡立ち
固さ

炭素数少<—————————————————>炭素数多
カプリン酸・カプリル酸・ラウリン酸・ミリスチン酸・パルミチン酸・ステアリン酸

チェックポイント!
水に溶けやすく泡立ちやすい石鹸には炭素数が比較的少ないラウリン酸、油汚れに強い石鹸にするには炭素が多いパルミチン酸、ステアリン酸が有効という見方になるかと。なお、油汚れには高アルカリの洗浄も有効です。アルカリ洗濯について

 

不飽和脂肪酸

不飽和脂肪酸

不飽和脂肪酸は隣りの炭素どうしが、一部で2重・3重結合しているものです。

二重結合とは上の図のように「炭素=炭素」の隣どうしが両手でつながっている状態。両手でつながっているものの、片手を離す余裕があります。片手を離して別の分子とくっつく余裕があるので飽和していない=不飽和脂肪酸、といわれます。

何かとくっつく余裕がある=変化しやすいというわけで、酸化・変質しやすいのが特徴。同時に融点が低く溶けやすいです。

離せる手が多いほど不安定になるため、オレイン酸<リノール酸<リノレン酸の順で酸化しやすくなります。

やわらかく肌にも穏やかな石鹸ができるほか、油脂によっては美容によいとされる成分も含まれており洗顔・浴用石鹸によく配合されます。水に溶けやすいので洗濯石鹸にも有用です。

メリットデメリット
パルミトレイン酸皮脂に10%含、皮膚の再生、比較的安定特になし
オレイン酸肌に浸透、保湿、比較的安定泡立ち少なめ
リノール酸 皮脂腺の増殖を助ける不安定
αリノレン酸(ほとんどの油脂)さらりとした質感非常に不安定
γリノレン酸(月見草油など一部)継続摂取でアトピー性皮膚炎に効果的(経皮としてはどうか?)非常に不安定
チェックポイント!
不飽和脂肪酸を含む油脂(オリーブ油やごま油とか)には天然の酸化防止剤ともいわれる成分であるビタミンなどが入っていたりするので、一概に不飽和脂肪酸が多いから悪くなりやすいとは言えません。

 

油脂の脂肪酸組成一覧表

マニアックですが脂肪酸組成の表です。どの油脂がどんな性質なのか参考にどうぞ。検索ボックスに油脂の名前を入れて検索可能です。脂肪酸名の▲をクリックで並べ替えができます。

見づらいので画像も用意してみました。クリックで全体が開きます。

脂肪酸組成表

 カプリル酸カプリン酸ラウリン酸ミリスチン酸パルミチン酸ステアリン酸パルミトレイン酸オレイン酸リノール酸リノレン酸
オリーブ油10.43.10.777.370.6
ヤシ油(ココナッツ)8.36.146.817.39.32.97.11.7
パーム油0.51.1444.40.239.29.70.2
パーム核油4.13.64815.48.22.415.32.6
アボカド油12.40.54.665.315.91
アプリコット核油7.61.30.868.322
スイートアーモンド油6.71.20.566.322.3
マカダミアナッツ油0.67.82.524.6572.1
ヘーゼルナッツ油2.70.627.143.59.21.9
グレープシード油0.211.13.921.261.40.7
椿油8.22.1854.10.6
ごま油9.45.80.139.843.60.3
大豆油0.110.64.30.123.553.56.6
米ぬか油0.316.91.90.242.6351.3
サフラワー油(オレイック)0.14.720.177.114.20.2
ひまわり油(オレイック)3.63.90.183.46.90.2
とうもろこし油11.320.129.854.90.8
菜種油0.10.14.320.262.719.98.1
綿実油0.619.22.40.518.257.90.4
くるみ油7.32.30.219.157.413.1
紅花油6.43.113.4770.1
落花生油11.73.30.145.531.20.2
亜麻仁油60.53.5171658.5
ククイナッツ油6.40.30.119.841.828.9
アルガン油0.112.35.644.631.10.1
月見草油6.21.811.970.69.5
ローズヒップ油3.81.7144435
カカオバター0.125.634.60.234.73.3
シアバター44147.46.1
ホホバ油0.21.60.411.90.2
みつろう942
ヒマシ油2173.6
牛脂0.12.526.115.7345.53.70.2
ラード0.10.21.725.114.42.543.29.60.5
馬油0.23.224.95.9735.510.89.5
バター(有塩)1.433.611.731.810.81.622.22.40.4
バター(無塩)1.42.93.611.932.8101.721.82.10.5

油脂の精製方法や原料の微妙な違いなどから、実際の数値と若干のズレが起こることご理解ください。データはこのページ下記の参考資料・サイトから引用しています。

 

 石鹸に使われる油脂の種類と特徴

石鹸に使われる(原材料)の油脂の種類と特徴についてです。

種類が多いのでどうしても長くなってしまいました。リストをクリックすると該当箇所まで飛びますのでご利用ください。

ハートマークは特におすすめの油脂ですのでぜひチェックしてみてくださいね。

ヤシ(ココナッツ)油、パーム核油

ココヤシの実から採れるのがヤシ油、アブラヤシの種から採れるのがパーム核油。この2つは性質がよく似ています。

ラウリン酸・ミリスチン酸が主のため溶け崩れにくく、泡が立ちやすく、洗浄力もある使いやすい石鹸になる油脂です。配合が多いと刺激性が出るため分量を抑えるとよいとされます。

パーム核油のほうが若干カプリン・カプリル酸が少なくオレイン酸が多いため低刺激。

刺激性は遊離したカプリン酸・カプリル酸・ラウリン酸の特性です。塩析済の石鹸では遊離脂肪酸は含まれないため問題ないと考えられます。

主な脂肪酸ラウリン酸、ミリスチン酸、カプリン酸、カプリル酸
石鹸の特徴冷水硬水向き、起泡性、固さ、洗浄力、痛みにくい

パーム油

アブラヤシの実から採れるのがパーム油。固く溶け崩れにくい、固形を保つために一役買ってくれます。

泡立ちはいまひとつですが泡持ちがよいため、起泡力のあるヤシ油やパーム核油とあわせて使われることが多いです。

主な脂肪酸パルミチン酸、オレイン酸
石鹸の特徴泡持ち、固さ、洗浄力、痛みにくい

オリーブオイル

オリーブオイルは使い心地がよく人気な素材のひとつ。オレイン酸が7割以上ですべすべと洗い上げることができます。

泡立ちはほどほど、やわらかめの石鹸になります。

また、不けん化物にトコフェロール(ビタミンE)やスクワレンという人の皮膚に含まれる保湿成分があります。酸化しづらく肌にやさしい成分が多いのが特徴です。

主な脂肪酸オレイン酸
石鹸の特徴保湿性、洗浄力、溶けやすい、痛みにくい

アボカドオイル

森のバター、アボカド。総合的なマイルドさ、肌なじみに定評がある油脂です。

オリーブオイルと脂肪酸組成が似ており、オレイン酸が6割以上。アボカドオイルのほうがリノール酸が多いので軽さと泡立ちがよくなります。

各種ビタミンやレシチンなどの美容成分が多く含まれています。また未精製オイルは濃い緑色(クロロフィル:抗酸化作用)と独特の香りが特徴的。精製されたものも少ないながら販売されています。

主な脂肪酸オレイン酸、リノール酸
石鹸の特徴保湿性、洗浄力、溶けやすい、痛みにくい

スイートアーモンドオイル

アーモンドの実から採れるオイル。オレイン酸が7割と、これもオリーブオイルに近いです。違いはリノール酸が3倍の22%ほど含まれていること。

必須脂肪酸であるリノール酸はさっぱりとした使用感で、皮脂腺の増殖を助ける特徴があります。オレイン酸・リノール酸が多いのでやわらかく穏やかな泡立ちの石鹸になりますね。

アーモンドならではのビタミンEの多さで抗酸化力の高い、質を上げる油脂です。

主な脂肪酸オレイン酸、リノール酸
石鹸の特徴保湿性、軽めのしっとり、起泡性

マカダミアナッツオイル、ヘーゼルナッツオイル

マカダミアナッツ、ヘーゼルナッツから採れるオイル。この2つは似た性質です。

特徴的なのはパルミトレイン酸の多さ。どちらも2割以上含んでおり、他の油脂よりも群を抜いて多いです。パルミトレイン酸は皮膚に10%前後含まれている脂肪酸で、加齢とともに減っていきます。

ビタミン等の不けん化物はどちらもありますが、ヘーゼルナッツオイルのほうが少し多め。オレイン酸とパルミトレイン酸、健康的な脂肪酸をたっぷり含んだ油脂です。

主な脂肪酸オレイン酸、パルミトレイン酸
石鹸の特徴肌にやさしい、保湿性、なめらか

アルガンオイル

アルガン

アルガンツリーという木の実から採れるオイル。採取量が少ないため比較的高価。

オレイン酸45%、リノール酸35%ほどの構成のため、柔らかく泡立ちのよいしっとりさっぱり…という非常に使い心地のよい石鹸になります。溶けやすくなるので湿気から遠ざけたいですね。

不飽和脂肪酸が多いですがビタミンE(トコフェロール)をオリーブ油の3倍含有しているため比較的劣化しづらいオイルです。

主な脂肪酸オレイン酸、リノール酸
石鹸の特徴起泡性、さっぱり、なめらか、少し傷みやすい

ひまし油

トウゴマの種から採れるオイル。キャスターオイル。インドではアーユルヴェーダに用いられてきたオイルだそう。

リシノール酸という他の油脂には含まれない特殊な脂肪酸を9割近くも持っています。とにかく粘度が高く、水を引き寄せる性質があるため保湿性を高める効果があります。

泡立ちもよく髪にもうれしい効果が…と言われているようですが、明確な根拠は不明でした。髪がしなやかになると好んでシャンプーに使う方も。おそらく粘度や保水性でコーティングするのでは、というのが個人的な考えです。

主な脂肪酸リシノール酸
石鹸の特徴保湿性、起泡性、溶けやすい

ククイナッツ油

ハワイで採れるククイの実のオイルです。リノール酸、リノレン酸で7割を占めるため酸化しやすい。

高価なオイルですが一定の人気があります。現地では古くから肌荒れ・乾燥によいとして肌に使われてきました。

さらさらとしているのに保湿性は高い、と使用感の良いオイルです。ただあまり手に入りません…

主な脂肪酸リノール酸、リノレン酸、オレイン酸
石鹸の特徴起泡性、さっぱり、肌にやさしい、痛みやすい

月見草油

月見草(マツヨイグサ)という植物の種から採れるオイルです。リノール酸70%、リノレン酸9.5%と非常に不安定なオイルではあります。

月見草油のリノレン酸はγリノレン酸といい、摂取によりアレルギーや更年期症状、PMSの軽減などの効果が期待されているのです。海外では医療にも用いられています。

石鹸もいいですが、マッサージオイルやサプリメントとして取り入れている方が多いです。

主な脂肪酸リノール酸、オレイン酸、リノレン酸
石鹸の特徴起泡性、さっぱり、肌にやさしい、痛みやすい

ローズヒップオイル

ローズヒップの種から採れるオイル。リノール酸44%、リノレン酸35%と月見草油より更に不安定です。非常にさらりとしていて乾きやすいオイルなので、夏場でも使いやすい。

特にビタミンCが豊富で、アントシアニン、リコピンなどとあわせて高い抗酸化作用があります。そのため美白や美肌によいと考えられています。

月見草油と同じく必須脂肪酸を取り入れるために食用にするケースが多いです。

主な脂肪酸リノール酸、リノレン酸、オレイン酸
石鹸の特徴起泡性、さっぱり、肌にやさしい、痛みやすい

シアバター

シアバターはシアの木の実から採れる油脂です。ステアリン酸とオレイン酸を4割強ずつ含み、固さがありつつもしっとり。ちょうど人の体温ほどの温度で溶けるのが特徴です。

不けん化物2%~10%近くと非常に多いのもポイント。抗酸化力のあるビタミンE、皮膚の再生を助けるカロチノイドなどが含まれます。

そのまま肌に塗れば冬場の乾燥時期などに役立ちますし、石鹸にしても形が崩れにくく保湿効果の高いものになります。

主な脂肪酸ラウリン酸、ミリスチン酸、カプリン酸、カプリル酸
石鹸の特徴崩れにくい、保湿性、固い、痛みにくい

ホホバオイル

ホホバの木の実を絞って採れるオイル…という名前ですが、厳密には液体ロウです。脂肪酸+グリセリンではなく、脂肪酸+高級(炭素数が多い)アルコールが結合したもの。

ロウはワックスエステルと呼ばれ、人の皮脂にも30%ほど含まれています。ホホバオイルのワックスエステルは人のものととても似ているため、とても肌に馴染みよく浸透しやすいです。

精製度の低いゴールデンホホバオイルはビタミンやミネラルが豊富なので、なお効果的。皮膚を保護し、痛みにくいという素敵なもの。

主な脂肪酸ガドレイン酸、エルカ酸、オレイン酸
石鹸の特徴肌にやさしい、保湿性、とても痛みにくい

大豆油

日本人にはおなじみ、大豆。これも油があります。

リノール酸が50%程度含まれ、リノレン酸と合わせると60%近くなります。これらは変質(酸化)しやすい脂肪酸のため、ボディ用の石鹸にはあまり使われていません。

主な脂肪酸リノール酸、オレイン酸、パルミチン酸
石鹸の特徴洗浄力、溶けやすい、さっぱり、痛みやすい

牛脂、豚脂(ラード)、バター、馬油

動物性油脂です。まとめてしまいましたが、大まかな性質は似ています。

融点が40℃~48℃と高いので常温では固体です。洗浄力があるので温水での汚れ落ちが良いです。体温で溶けないので肌に使うと重めの仕上がりになりがち。

馬油だけは特殊で、たてがみの下から採れるものはパルミトレイン酸が多く、肌なじみがよい油脂です。皮膚にやさしいのでスキンケアにも使われますね。

主な脂肪酸オレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸
石鹸の特徴固さ、洗浄力、洗浄性、痛みにくい、溶けにくい

 お気に入りの油脂が見つかると石鹸選びが楽しくなります

たくさんの油脂から目的にあったものが選ばれ、石鹸になっています。原材料の油脂はどれか一つでもよし、いくつか配合された絶妙なバランスもよしです。

お気に入りの一品を探すヒントにしていただければと思います。

今後、新しい情報がありましたら随時追記していきますのでよろしくお願いいたします。

参考書籍

参考サイト